まず言語化し、次に能力が蓄積される構造で実行し、最後に外部依存を断つ。 この順序を崩さないことが、変革を定着させる唯一の方法だ。前のフェーズが完了しなければ、次のフェーズは機能しない。
Phase 1|CLARIFY(明確化)
明確化
目的:課題の本質と組織の特性を言語化する
「組織を変えたい」という意志があっても、「何が変われば変革といえるのか」が言語化されていない組織は多い。この状態で施策を動かすと、改善が部分最適に陥る。各部門が自分たちの「正解」を追いかけ、力が打ち消し合う。
CLARIFYフェーズでは、二つのことを言語化する。
- 「今いる場所」の特定。強み・弱み・歴史・資産・人。外から見えていないものを含めて、組織の現在地を言語化する。数字だけでなく、判断の前提として機能している暗黙知を掘り起こすことが中心になる。
- 「向かう場所」の定義。ビジョンの策定ではない。「どのお客様に、どのような価値を、どのような方法で届けることが最も合理的か」という問いに、経営・企画・現場が同じ理解で答えられる状態をつくる。このコンセンサスが、以降のすべての改善の北極星になる。
Phase 2|ACT(実行)
実行
目的:能力が蓄積される構造で変革を実行する
施策を正しく実行しても、その経験が組織に残らなければ能力は蓄積されない。外部の専門家が改善を「代行」した瞬間、変革は他人事になる。ACTフェーズでは、改善の主体を一貫して現場に置く。
- プロセスの可視化と再設計。BPM/LSSを活用するが、ツールの習得が目的ではない。「このプロセスはなぜ存在するのか」という問いを、現場自身が立てられるようになることが目的だ。
- KGI・KPIの再設計。CLARIFYで定義した北極星に向かって、何を測るかを設計する。因果仮説——「このインプットが最終的な顧客価値につながる理由」——を明示することが設計の核心だ。
- 誠実構造の埋め込み。判断のたびに前提・根拠・因果仮説・修正トリガーを記録する習慣を、会議・報告・意思決定の設計に組み込む。
Phase 3|TRANSFER(移転)
移転
目的:外部依存を断ち、自走状態を確立する
移転するのは、改善の結果ではなく改善の思考だ。「この施策を使え」ではなく、「なぜこのプロセスを選んだのか」「どこで悩み、どう判断したのか」という思考のプロセスを組織に定着させる。思考が共有されたとき、現場は「自分たちならどこから始めるか」を自分で問えるようになる。
ATBSとの協働なしに、組織が自律的に改善サイクルを回し続けられること。この状態を確認してから、協働を終了する。
3フェーズの全体像
| 比較軸 | CLARIFY | ACT | TRANSFER |
|---|---|---|---|
| 目的 | 課題と特性の言語化 | 能力が蓄積される実行 | 外部依存の解消・自走確立 |
| 中心的な問い | 何が変われば変革か | どう能力を蓄積するか | 協働なしで続くか |
| 主な手法 | 対話・暗黙知の言語化 | BPM・LSS・誠実構造 | 思考の移転・内製化 |
| 完了の定義 | 北極星のコンセンサス | 改善サイクルの稼働 | 自律的な改善の継続 |
| 失敗パターン | 言語化をスキップして施策へ | 外部が改善を代行する | 結果だけを渡して終わる |
ATBSの成果の定義
ATBSの成果は、協働の完了ではない。成果とは顧客から見たものだ。
能力経営のサイクルが自律的に回り、誠実構造によって判断の前提がリアルタイムで照合され、事実に向き合う判断が組織の日常になっている。その結果として企業価値が継続的に向上している状態——それがATBSの定義する成果だ。
顧客がその状態に至ったとき、ATBSの支援は自然に不要になっている。支援が不要になることが、顧客の成功の証明だ。
このモデルが前提とすること
「正解を外から持ち込む」ことを前提としない。各フェーズの成果物はATBSが作るのではない。ATBSは問いを立て、構造を設計し、現場が自分で考え抜くプロセスを支える。答えは組織の中にある。
「変革は一度きり」を前提としない。環境が変われば北極星の再定義が必要になる。判断の前提が崩れれば修正が必要になる。変革とは完了するものではない。問い続け、調整し続ける能力だ。